悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、NHL)の治療
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非ホジキンリンパ腫(以下、NHLと省略)には多くの治療が行われます。治療はNHLの種類(組織型)や病期に合わせて計画されます。患児全員にこれらの治療の全てが必要とは限りませんが、子どものNHLのほとんどは手術だけでは治せないと知っておくことが重要です。
化学療法
NHLでは化学療法が標準的な治療です。腫瘍細胞を破壊したり、腫瘍が増えたり広がったりしないようにするために行う薬物治療です。抗がん剤は内服するか、注射で静脈や筋肉内に投与します。薬剤は、身体の至る所にある腫瘍細胞を破壊するために血流にのって全身へ送り届けられます。
放射線治療
放射線治療では腫瘍細胞を破壊するために高エネルギーの放射線を使用します。放射線治療は、NHLに対する総合的な治療法として必要とされることはまずありません。
幹細胞移植を伴う高用量化学療法 (場合によって放射線治療を併用)
治療が一旦成功した後に再発した場合や定型的な治療に反応しない場合(治療抵抗性)に治癒の可能性が一番あるのは、初期治療の後で幹細胞移植を行う大量化学療法を行うことです(放射線治療は併用する場合としない場合の両方があります)。幹細胞移植には2種類あり、どちらを行うかかはリンパ腫の種類や他の要因で決まります。
モノクローナル抗体療法
モノクローナル抗体療法には研究室で作られた抗体(タンパク質)を使用します。この抗体は腫瘍細胞上にある特別な「マーカー」を認識することができます。抗体が腫瘍細胞にあるマーカーと結合すると、腫瘍細胞を死滅させたり増殖を妨いだりします。モノクローナル抗体は化学療法と同じ方法で静脈内に投与します。モノクローナル抗体は抗がん剤と一緒に投与すると、さらに有効性を発揮します。成人のNHL患者の治療に役立つと証明されているモノクローナル抗体は「リツキシマブ」です。
非ホジキンリンパ腫(NHL)の原因
現在のところ、NHLの原因が何かはわかっていませんが、一部の発症リスクの要因がわかっています。
男女差(米国)
米国では、女児と比べると、男児が20歳になる前にNHLを発症する可能性は2~3倍高いようです。2人の女児が診断される時に、男児は約5人が診断されているという計算になります。
発症率と民族性
米国では、東欧系白人の子どもがNHLを発症する可能性は、アフリカ系の子どもの40%くらいです。
免疫機能が低下した子どもは他の子よりもNHLを発症する可能性が高い傾向があります。例えば、HIV(AIDSの原因ウイルス)や臓器移植後に免疫系を抑えるための治療を受けている子は、NHLを発症しやすいです。このような条件下にあるお子さんはNHLの発症リスクがより高くなりますが、それが発症原因となるのはごく一部の症例だけです。また、毛細血管拡張性運動失調症やファンコニ症候群のような遺伝子の突然変異を修復する力が欠如しているお子さんもNHLを発症するリスクが高い状態にあります。
臨床試験への参加
ホジキンリンパ腫(NHL)の原因については研究が進められています。「登録中」の臨床試験があり、お子さんにその臨床試験の「適格性」がある場合は、医師から参加するように依頼されるかもしれません。複数の臨床試験に参加するように依頼されることもあり得ます。
その子に臨床研究に参加する資格があるかどうかは、年齢や診断時期などの条件によって異なります。科学的に有効な研究をするために、研究者は通常、研究対象の特性を十分に考慮しています。研究者が適格性のある家族を見つける際には、親御さんに遠い過去の出来事を思い出してもらう事態を避けるため、ある年に診断された患児だけに対象を絞ることもあります。
米国では通常、NHLの原因を研究している研究者が電話で親御さんから聞き取り調査を行います。聞き取り調査では、親御さんは自分達やお子さんが経験してきたことについて質問されます。その目的は、がんの発症リスクに影響したかもしれないことについての情報を集めることです。何が発症リスクに影響を及ぼすのかはわかっていないので、研究者はよりたくさんの情報を見つけ出すために質問をします。また、親御さんやお子さんに小さな生体標本(通常は頬の内側の細胞、血液、髪の毛など)の提出を依頼する場合もあります。さらに、家のほこりや水を標本として提出するように求める場合もあります。遺伝子異常や薬剤、ラドン(※訳注:放射性物質の一つ)、化学製剤などとの接触が単独で、または複数が組み合わさると人々にがんを発症させやすくするのかどうかを研究するために、研究者は聞き取り調査の内容と採取した標本の情報を使います。 臨床試験に参加するように依頼される時は、結果についてどのような情報を受け取れるのかについて説明されます。研究の全体的な結果は公の場や他の研究者に知らせるために公表されます。個人を特定できるような情報は一切公表されません。
臨床研究(臨床試験)
米国では、がんの患児の大部分が臨床研究(臨床試験)に参加しています。このような参加率の高さは小児がんの治癒率を改善するのに不可欠です。 研究者は、治療法を改善し、かつ、がんの性格とその原因について理解を深めるために様々な研究を計画します。臨床試験は慎重に審査され、誰でも登録できるようになる前に正式な科学的手順を経て承認されなければなりません。登録中の臨床試験で、お子さんに“適格性がある”場合には、参加するように依頼されるかもしれません。複数の研究に参加するように依頼されることもあります。
特定の研究への適格性があるかどうかは、年齢、がんの部位、病気の広がりやその他の情報によって判断されます。通常、科学的に有効な研究を行うために研究者は研究対象者が的確かどうか厳密に調べなければなりません。さらに研究者は研究の間、厳密に同じ制約に従わなければなりません。
患児に複数の研究(臨床試験)への適格性がある場合、主治医はそのことについてインフォームド・コンセントのための面談(カンファランスと呼びます)を開いて親御さんと話し合います。親御さんがお子さんを研究に参加させたいと思っているか否かに関係なく、主治医は参加することによる潜在的なリスクや、親御さんが決断するために必要なその他の情報について説明してくれます。研究に参加するかどうかをいつでも選択することができます。
お子さんを研究に参加させることを選んだ場合、主治医はその研究の結果からどのような情報を得ることができるのかを説明します。研究の最終的な結果は、一般の方および他の研究者に知らせるために公表されます。どのような研究においても個人が特定されるような情報は公表されません。
様々な種類の研究について詳しく知るためには、このウェブサイトの臨床研究(臨床試験)の項目を参照してください。
米国版の更新時期: 2011年7月
日本版の更新時期:2012年3月