肝芽腫などの小児肝がんの診断
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肝臓は腹部の右上部にある大きな臓器で、胸郭によって保護されています。正常な肝臓の機能は、食物から吸収した栄養素を蓄えるのを助けること、有害な化学物質を破壊して体内から取り除くこと、身体の健康を保つのに必要な化学物質を作り出すことです。
肝臓を構成する細胞が通常の制御機能を失って無制限に増殖を始めると肝がんが発症します。子どもや若者に最も多い肝がんは以下の2種類です。
(※訳注:「肝がん」とは肝臓の悪性腫瘍全体を意味する言葉です。その主なものとして「肝芽腫」や「肝細胞癌」があります。)
- 肝芽腫(HB): 2カ月から3歳までの乳幼児に最もよく発症します。
小児肝がんの中で一番多いです。 - 肝細胞癌(HCC): 10歳から16歳までの子どもに最も多く発症します。
米国では毎年約100人の子どもが肝芽腫と診断されており、肝芽腫と肝細胞癌を合わせると小児がん患者全体の約1~2%を占めています。
小児肝がんの症状
肝がんは腫瘍が急速に大きくなるため、腹部の腫大がよく起こりますが、これはしばしば他の症状を伴わずに起こります。その他に起こり得る症状は以下の通りです。
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐
- 胃痛
- 黄疸
- 体の片側とその反対側とで成長が異なる (※訳注:たとえば片方の腕がもう片方の腕よりも大きい場合など)
- 思春期早発症
小児肝がんの診断確定
小児の肝がんを診断するためには多くの検査が行なわれます。最初の検査は通常X線検査か超音波(エコー)検査です。その他に行なわれる検査は以下の通りです。
- CT検査
- MRI検査
- 生検
- 血液検査
- 全血球数(CBC)
- アルファフェトプロテイン(AFP)は胎児期の未熟な肝細胞によって作られる物質(タンパク質)で、肝がん(※訳注:肝芽腫や肝細胞癌)の患児においてしばしば高い値を示します。
進行度の判定
肝がんが見つかった場合は、がん細胞が身体の他の部位まで広がっているかどうかを確かめるためにさらに多くの検査が行なわれます。この過程を病期分類と呼びます。
肝がんの病期は4段階に分けられています。
- 病期Ⅰ: 全てのがんが手術によって取り除かれた状態。
- 病期Ⅱ: 手術後、切除部分の正常な肝組織(※訳注:切除した断端面)にがん細胞が見つかった状態。これは、ごく少数のがん細胞が肝臓内におそらくまだ残っていることを意味しており、顕微鏡的残存病変と呼ばれます。
- 病期Ⅲ: がんの一部は手術で削除されたものの、残りの一部(または全て)を取り除くことができなかった状態。
- 病期Ⅳ: がんが肺または身体の他部位へ広がってしまっている状態。
- 再発: 治療後にがんが再発した状態。肝がんは肝臓または身体の他の部位に再発します。
肝がんの原因
肝がんがどのように発症するのか確かなことは不明ですが、肝細胞の成長過程で突然変異が生じて発症すると考えられています。これらの細胞は正常な肝細胞がもつ制御機能を失ったために増殖を続け、このような無制限な増殖が肝がんを引き起こします。一部の患児は非常に幼いうちに肝芽腫と診断されるため、これらの患児は生まれる前からがんを発症していたと考えられます。
肝細胞癌は肝炎の発生率が高い地域でより多くみられます。肝炎を起こす複数のウイルスのどれかに感染することが原因であると考えられています。
肝芽腫のリスク因子として確実にわかっていることはごくわずかです。
遺伝的な条件
一部の遺伝子疾患(症候群)のお子さんは、他の子よりも肝芽腫を発症しやすい傾向にあります。それは、ベックウィズ・ヴィーデマン(Beckwith-Wiedemann)症候群と家族性大腸腺腫症です。このような疾患の遺伝子変異を持つお子さんは肝芽腫の発症リスクがより高くなりますが、こうした事例は肝芽腫全体のごく一部を占めるに過ぎません。これらの症候群は、がんが発生していなくても医療機関を受診する必要があるので、親御さんはお子さんがこれらの遺伝子疾患に該当するかどうかをご存知です。
出産時の低体重
出生時の体重が1,500g未満の赤ちゃんは、標準体重で生まれた赤ちゃんに比べると肝芽腫の発症リスクがはるかに高いです。平均値よりも小さい赤ちゃん(1500g~2600g程度)は肝芽腫の発症リスクがわずかに高くなります。出生時体重がより少ないほど発症リスクが高くなる理由は明らかではありません。
しかし、低体重で生まれてきても、そのほとんどは肝芽腫を発症しません
米国版の更新時期: 2011年9月
日本版の更新時期: 2012年3月