親の感情 〜具体例〜

 患児の親が抱く感情の種類と、その具体例をご紹介します。 同様の経験をした人が他にも大勢います。利用可能な支援もあります。

 親のみなさん、あなたはひとりではありません。

『不安』

・わが子を失い、孤独、苦痛、不幸になるかもしれない。
・先が見通せない。
・わが子が他のこどもと違う。大切なこども時代を失ってしまう。
・疎外感。
(訳注:「親である自分が置いて行かれる」「わが子を取られるような気持ち」と
 表現する親もいます)
・患児が何を求めているかが分からない。
・パートナーとコミュニケーションを取れるのか、この状況を乗り越えるほど絆が強く
 ないかもしれない。
・自分自身も、この危機を乗り切れるほど強くないかもしれない。


『怒り』

・自分のこどもと家族にだけ災難が起きている。
・自分やパートナーが十分に働くことができず、日常生活が混乱に陥れられる。
・勤務先が柔軟に対応してくれない。
・親族や友人が思ったほど助けてくれない。
・病院での治療には色々と費用がかかり、お金が無い。こどもたちに必要なことをして
 あげられない。

『心配』

・患児が快方に向かわない。長期の闘病で患児自身はどう思っているのだろう。
・学校生活のほとんどを、患児は経験できないかも知れない。
・他の家族の健康にも影響が出るのではないか。
・きょうだいも辛い思いをしているのに、一緒にいてあげられない。
・きょうだいについて、何か大切なことを自分が見落としていないか。彼らが怒って
 いるのではないか。
・自分の気力が失せてしまうかもしれない。
・失業するかもしれない。

『孤独感』

・周りに人がいても、患児の病気のことを考えて、苦悩と孤独を感じる。
・パートナーときちんと話し合うことができていない。
・家族のことなので、気持ちを表に出したくない。
・周囲に同じような経験をした人もいない。自分の親(患児の祖父母)も心配するだけ
 だし、祖父母の健康も心配。
・友人に相談しても、この深刻さは理解できない。
・病院で他の親とうまく話せる気がしない。スタッフのこともよく知らないし、
 まだ信頼できない。

『閉塞感』

・病院では患児と一緒なので、愚痴が言えない。
・病院から離れると患児のことが心配になり、病院にいれば家や仕事のことが
 気になる。

『罪悪感』

・自分がこどもを病気にしてしまったのではないだろうか。
・もっと早く医者に連れて行けばよかった。「風邪」と言われた時、
 もっと話し合えばよかった。
・身体によい食べ物を患児に与えなかったかも知れない。
・このまま逃げたくなる。
・時々、こどもを強く怒ってしまう。
・病院のスタッフにイライラをぶつけたり、自分と同じようにしてくれないパートナー
 に腹を立ててしまう。
・気持ちが落ち着かないと飲酒をしてしまう。自分たちの喫煙も関係したのだろうか。

『感謝』

・よい治療を受けられること。治療が順調に進んでいること。
・応援してくれる友人や親せきに対して。
・医療福祉従事者に対して。

『恥ずかしい』

・今までとは違うことで人に助けを求めなければいけない。
・こどもの送り迎えなど、自分がやっていたことを他の人に頼まなければならない。
 その上、今では、その人が自分の家 族のことをよく知っている。
・疲労、恐怖、ストレスなどが原因で、主治医の説明を理解していなかったり、
 覚えていないことがある。

『混乱・困惑』

・病院では、誰に何を頼めばいいのか、何をすればいいのか。
・家か病院か、いつどこにいればいいのか。
・自分自身が困惑しているのに、どうやってこどもたちの力になればいいのか。
・患児の病気について、パートナーと思いが異なるようだ。
・仕事を続けられるか。経済的に大丈夫か。
・以前のように、すべてがうまくいくような日が来るだろうか。

『切迫感』

・しばらくの間、病院を離れたい。
・時間を戻して、この大きな懸念を無くしたい。
・パートナーと患児のことをもっと話し合いたい。
・ぐっすり眠りたい。
・散歩に出たりして、がんから離れたい。

『嫉妬』

・健康。患児より元気そうなこどもがいる友人、親せき、他の親に。
・病院の近くに親せきがおり、彼らにサポートをしてもらっている人に。
・離婚していない家庭に。

『切望』

・病気が分かる前の日々。
・患児のきょうだいとだけ、またはパートナーとの時間。
・穏やかで、恐怖が無い日。
・病院以外の場所。
・家の自分のベッドでの睡眠や、日光の下での散歩。

『不満』

・自分が患児のケアについてきちんと理解しているとは思えない。
・患児が不快な思いをしているのに、どうすればいいのか分からない。
・病院には多くのスタッフがいる。自分の担当は誰か、主治医との関係のように
 信頼し合えるスタッフがいるか。
・病院ではスペースが狭く、プライバシーが無い。

『打ちのめされる』

・自分がいない時の家の管理について考えると。
・病院にいたいのに、仕事をしなければならない時。
・「手伝いたい」という人がいるが、何をして欲しいか伝える気力も体力も無い。
・患児への愛情と将来を思うと。
・経済的なことを考えると。

日本版更新20212

 

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