サポートの準備

 知り合いのこどもが病気になったと聞くと、心配や悲しみの感情が沸いて、「何か手助けできないか」と思うのは当然のことです。
周囲の人たちからのサポートの申し出に、多くの親は戸惑いをみせます。それは、どのような助けが必要なのか分からないからです。わが子の診断後の親は考えるべきことも多く、押しつぶされそうになっています。中には、親族や友人であっても、手助けしてもらうことに抵抗を覚える人もいます。
 ここでは、サポートにあたり、まず考えるべきことを挙げています。

 

《患児家族全体のこと》

 どのようにサポートするか考える際には、患児の家族全体のことを考えましょう。患児、親御さん、患児のきょうだい、誰もが病気の影響を受けます。家族ひとりひとりが必要としていることはさまざまで、対処方法も異なります。

 母親
 研究によれば、母親にとって精神的に一番厳しいのは、わが子ががんの診断を受けて治療を開始する時です。通常は、いったん治療が始まると、母親は治療に向き合い、精神的な辛さが軽減するそうです。
 父親は仕事や家の経済事情が気になる傾向がありますが、母親はサポートをしてくれる親族や友人を見つけようとします。友人や知り合いからのサポートによって、母親が患児の病気に向き合う姿勢を大きく改善することができます。

 父親
 こどもが病気になることで、家計が厳しくなることがあります。その場合、父親が仕事を続け、母親が仕事を減らしたり辞めたりする傾向があります。
 診断された時には父親は母親ほど悩まないように見えます。しかし、治療が始まると、母親の不安は多少減るのに対して、父親の不安は減らないようです。
 米国の研究ですが、母親は家族や友人によるサポートを求めることが多いのに対して、父親は医療の専門家、自分の両親や親族、信仰する宗教団体などのサポートに重きを置く傾向があるそうです。

 きょうだい
 多くの人が患児に注意を向けてしまい、患児のきょうだいが放っておかれてしまうことがあります。がんの治療は長く複雑なことが多いので、きょうだいの優先順位が低くなる場合があります。度重なる通院、長引く入院、親が患児にかかりっきり、きょうだいと患児の隔離、家族の分離など、非常に厳しい状況となります。彼らは、不安、抑うつ、学業上の問題、寂しさ、孤独感、身体の不調を訴えます。家庭、学校、自分たちの周りの環境に関する問題を口にします。しかし、ストレスに満ちた混乱の時期、両親が彼らの側にいることは困難です。
 きょうだいに「ひとりではない」「きょうだいの気持ちも重要で意味がある」ということを上手に理解してもらえるようなサポートが重要です。

 

《ストレスを感じている家族のサポート》

 情報や実践的なアドバイスの提供など、いろいろあります。また、精神面をサポートすることで、「自分たち家族は気にかけてもらっている」と感じることができます。
 研究によれば、周囲からのサポートがある家族は、支援が少ない家族と比べると、
 ·困難な状況に上手に立ち向かえる
 ·抑うつ状況に陥ることが少ない
 ·ストレスを感じる程度が低い
など、より前向きに対応できるという傾向があるそうです。
 また、サポートを受けて社会とつながることでストレスが軽減し、身体的な影響(心臓血管系、内分泌系、免疫反応など)を減少させるという研究もあります。

 

《患児が遠くの病院で治療を受ける場合》

 自宅から離れた病院でしか受けられない特別な治療もあり、そのことで家族の日常が崩れることもあります。多くの場合、両親のどちらかが仕事を長期に休むか辞めるかして付き添い、もう一人が仕事を続けながら家事や患児のきょうだいの世話をすることになります。そのため、家族全員が極めて強いストレスを抱えます。
 このような時、買い物や送り迎えのようなサポートは、家に残っている親やきょうだいにとって非常に大きな助けとなります。

 

《みなさんが患児の家から遠くに住んでいる場合》

 患児の家から遠い所に住んでいても、できるサポートがあります。
 例えば、電話などで話を聴いてあげる。家族が希望するようなら、患児の家の近所のケータリングを利用して食事を届けてもらう。メールやビデオ通話などで、こども同士の交流機会をつくる、などです。
 また、患児の家族の近くでサポートの中心になっている人(「キーパーソン」と呼びます)がいたら、その人に連絡して、手伝えることがあれば連絡をもらえるようにしておくとよいでしょう。

 
 

日本版更新:2023年2月
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