成長ホルモンの不足

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小児期にがんの治療を受けた人の中には、ホルモンの異常をきたす場合があります。これは、内分泌系として知られている、ホルモンを分泌する器官の機能異常によって起こります。

内分泌系は、成長、第二次性徴、活力、尿の生成、ストレス反応などを含む多種多様な身体機能をつかさどる分泌腺のグループのことです。内分泌系には脳下垂体、視床下部、甲状腺、副腎、膵臓、卵巣(女性)、精巣(男性)があります。視床下部と脳下垂体は内分泌系の他のたくさんの分泌腺を制御しているので「内分泌中枢」と呼ばれることもあります。残念なことですが、小児がんに対して行われる治療には内分泌系に悪影響を及ぼし、様々な問題を引き起こすものも含まれています。

ホルモンは、血流を通じて内分泌腺から全身の細胞へ情報を運ぶメッセンジャーの役割をする化学物質です。内分泌系器官は、特定の身体の機能を維持するために働く様々なホルモン(成長ホルモン、性ホルモン、副腎ホルモン、甲状腺ホルモンなど)を作っています。

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成長ホルモンとは

成長ホルモン(GH)は脳下垂体で作られます。その子に可能な最大限の身長まで成長するためには、適切な量の成長ホルモンが必要です。成長ホルモンは、小児や10代の若者が成長するために甲状腺ホルモン、運動、適切な栄養、休息と一緒に作用します。さらに、血糖値を正常に維持し、歯の健康な発達のためにも必要です。骨の成長を助けることに加えて、心臓や血管の機能、身体が使用する脂肪の量、筋肉を作る量、骨の強さ、そして生涯にわたる健康全体に影響を及ぼします。

健康な人は、成人になってからも成長ホルモンの生成が続きます。成人は、適度な量の脂肪、筋肉、骨を維持するために少量の成長ホルモンを必要とします。気分や感情をつかさどる脳の領域を刺激したりコントロールしたりする役割も果たします。

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成長ホルモン欠乏症

頭部や脳内への放射線治療や手術などのがん治療は、成長をコントロールするホルモン分泌腺を誤動作させる可能性があります。その結果、脳下垂体が十分な成長ホルモンを生成しなくなり、成長ホルモン欠乏症となります。

徴候や症状

成長ホルモン欠乏症の一番わかりやすい症状は成長(身長の伸び)が著しく遅いことです。身体が小さく、同年代の子どもよりも幼く見える傾向がありますが、体型は普通です。

成長ホルモン欠乏症の成人には、骨が細い、筋肉が弱くなる、体脂肪が増える、血中コレステロール値が高くなるなどの様々な症状があります。成人では倦怠感、不安感、イライラする、悲観的になる、消極的になる、などの感情面での症状もあります。

リスク要因

  • 成人と同じくらいの身長になる前に受けたがん治療、特に患児が非常に幼い時に治療を受けた場合
  • 頭部や脳への放射線治療、特に下記のような領域に18グレイ以上の線量で照射した場合
  • 全脳照射 (特に骨髄移植や幹細胞移植の前処置として行われた場合)
  • 頭蓋、脊髄、鼻咽頭部(鼻および喉)
  • 中咽頭部(口と喉)
  • 眼および眼窩
  • 側頭下部(頬骨の後ろの領域)
  • 全身照射(TBI)、特に単一照射で10グレイ以上の線量、あるいは分割照射の1回あたりが12グレイ以上の線量の場合
  • 脳の手術、特に脳下垂体がある脳の中央部(鞍上部)を手術した場合

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推奨される定期検診

全ての小児がん経験者は、身長と体重の測定を含む年1回の身体検査、および第二次性徴の発現状態、栄養状態、全般的な健康に関する診察を受けるべきです。前述のようなリスク因子がある患児は、成長が終わるまでこの検査を6か月ごとに受けましょう。

甲状腺機能不全などの他の原因で起きた成長不全である可能性についても診察で確認してもらいましょう。成長ホルモン欠乏症が疑われる場合には、患児はおそらく内分泌専門医(ホルモン治療を専門とする医師)に紹介されます。内分泌専門医はこの問題を診察するためにさらに特別な検査を行います。

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成長ホルモン欠乏症の治療

成長ホルモン欠乏症が判明すると、内分泌専門医が治療の選択肢を提示します。治療では、脳下垂体で作れなくなっている成長ホルモンを補充するか、あるいは他の薬剤で置き換えることになります。合成成長ホルモンと呼ばれるホルモン剤の補充は注射で行います。一般的な成人の身長か、その子に可能な最大限の身長に達するまで、数年間にわたって成長ホルモンが投与されます。お子さんの成長の可能性については内分泌専門医から十分な説明を聞きましょう。成人になるまで続ける必要がある治療の選択肢については内分泌専門医とよく話し合うべきです。

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