「ブレオマイシン」に関する注意事項

肺は身体中に酸素を供給して二酸化炭素を排出する役目を担う、非常に重要な器官ですが、小児がんの治療は時として肺に悪影響を及ぼすおそれがあります。小児がんの治療でブレオマイシンの投与を受けた場合、治療後に起こるかもしれない肺の問題について知っておくことがとても大切です。肺を健康に保つための追加情報を提供していますので、「肺の健康」のページも参照してください。

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ブレオマイシンの投与後に起こる問題

小児がんの治療でブレオマイシンの投与を受けると、治療終了後何年も経ってから、肺に次のような問題が起こることがあります。

  • 肺の炎症(間質性肺炎)
  • 肺の損傷(肺線維症)
  • 高濃度の酸素吸入もしくは大量輸血またはその両方により生じる呼吸困難(急性呼吸窮迫症候群、急性呼吸促進症候群)

間質性肺炎:

間質性肺炎とは、肺胞と肺胞の間の薄い組織層に生じる炎症のことです。この炎症は、肺炎などの肺感染症を発症するとさらに悪化します。ブレオマイシン投与後の間質性肺炎は、有毒ガス、タバコの煙、あるいは数時間以上高濃度の酸素に曝されることによって発症することがあります。

肺線維症:

肺線維症とは、炎症の進行により肺胞が傷んで線維に置き換わってしまうことです。これによって肺胞がつぶれて硬くなり、肺胞における酸素と二酸化炭素の交換にも影響が生じます。肺線維症は時間の経過とともに悪化し、早期に心機能障害を引き起こす可能性もあります。

急性呼吸窮迫症候群(急性呼吸促進症候群、ARDS):

ARDSとは、肺胞が損傷を受けた時に生ずる重篤な症状で、肺が体内に酸素を供給できなくなります。過去にブレオマイシンの投与を受けた場合、通常は高濃度の酸素吸入と外科手術中の大量輸血が組み合わさった時にARDSを発症するリスクがあります。ARDSを発症するリスクは非常に小さいものですが、酸素の投与や全身麻酔を伴う治療を受ける際には、外科医、麻酔医やその他の治療関係者に、小児がんの治療で過去にブレオマイシンの投与を受けたことを必ず伝えてください。

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ブレオマイシンの投与後、肺に問題が起こるリスクを高める要因

  • ブレオマイシンの総投与量が多いこと(総量で400単位/m2以上)
  • 胸部・肺への放射線照射、もしくは全身照射(TBI)
    (※訳注:「TBI」とは「Total Body Irradiation」の略で、全身のがん細胞を消失させるとともに、骨髄移植に先立って、拒絶反応を防ぐ目的で宿主の骨髄幹細胞を根絶やしにして免疫力を低下させるために化学療法と併用して行われる全身照射のことです。)
  • 他の抗がん剤による治療も肺に悪影響を及ぼします(「肺の健康」のページを参照してください)
  • 高濃度の酸素にさらされること(全身麻酔あるいはスキューバダイビングの時など)
  • 喫煙

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推奨される経過観察

  • 小児がんの治療でブレオマイシンの投与を受けた人には、年に一度、定期検査を受けることをお勧めします。
  • 胸部レントゲン検査肺機能検査は、定期検査ではわからない肺の問題も明らかにすることができます。このため、治療後に少なくとも一度(がん治療終了から2年以上経過した後)、これらの検査を受けて、問題がないかどうかを確認しておくことが有効です。これらの検査結果により、主治医は更なる検査が必要かどうかを決めることができます。
  • 麻酔中や麻酔後に呼吸困難を起こすリスクを高めるような肺の変化がないかどうかを確認するため、全身麻酔を伴う外科手術の前には、胸部レントゲン検査と肺機能検査を再度実施する必要があります

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その他の特別な注意事項について

もし、過去にブレオマイシンの投与を伴う治療を受けた場合には次のことに気をつけておく必要が有ります。

  • スキューバダイビングはやらないこと。スキューバダイビングをすると、増加する水圧と高濃度の酸素吸入が肺に悪影響を与えます。
  • 酸素吸入が必要な治療を予定している場合には、過去のがん治療歴を外科医、麻酔科医、その他の治療関係者に説明しておきましょう。
  • 高濃度の酸素吸入、特に長時間(数時間以上)にわたる吸入は可能な限り避ける必要があります。酸素吸入が必要な場合には、通常、酸素濃度レベルをモニターすることで必要最低限に抑えることができます。
  • 感染症(肺炎)の予防ワクチンを受けましょう。
  • インフルエンザの予防ワクチンを受けましょう。
  • タバコを吸わないようにしましょう。もし現在タバコを吸っているならば、主治医に禁煙治療の相談をしましょう。

Margery Schaffer [RN, MSN, CRNP]

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