「ゲノム」とは

最近、“遺伝子”とか“ゲノム”などの言葉を見聞きすることが増えてきました。「なんとなくわかるような、わからないような…」、そのような方も多いのではないでしょうか。まず、これらの言葉について解説します。

 

遺伝と遺伝子

「お父さんに似て目が二重なのね」「髪の毛の色がお母さんと同じね」などと言われたことはありませんか。このように、親が持つ体の特徴(形質)が子に伝わることがあります。これを「遺伝」といい、「何を遺伝として伝えるか」という情報の部分を「遺伝子」といいます。つまり、「遺伝子とは親から子へ形質を伝える情報そのもの」といえます。

 

遺伝子、DNA、染色体

では、この遺伝子はどこにあるのでしょうか。

私たちの体は、約60~70兆個(※)の細胞で出来ていると言われていますが、この細胞のひとつひとつに「核」といわれるものがあります。核の中には、二重らせん構造をした糸状の「DNA(デオキシリボ核酸)」が、折りたたまれて「染色体」として格納されています。
DNAは、4種類の物質が長く連なってできています。この物質の並び順は、それぞれを構成する塩基の頭文字A、T、G、Cで表した「文字列」で表すことができます。この文字列のことを「塩基配列」といいます。遺伝子の情報は塩基配列によって決まり、その情報にしたがって体内で「タンパク質」が作られます。
タンパク質は細胞をつくる材料です。私たちの身体は、水分が65%、次にタンパク質が15%を占め、残る20%は脂質や炭水化物などで構成されています。細胞の動きをコントロールしているのはタンパク質が中心です。正しい時期に正しい場所で、正しいタンパク質が作られることで、私たちの身体は成り立っています。

(※)論文によっては、人の細胞は約30兆個との報告もあります。

 

ゲノム

ゲノムとは、「gene(遺伝子)」と、ギリシャ語の「すべて」を意味する「―ome」を合わせた造語で、「DNAの文字列に表された遺伝情報すべて」を意味しています(※)。

人のゲノム(ヒトゲノム)のDNAの文字列(塩基配列、シーケンス)は32億文字列(塩基対)にもなります。この32億文字列のうち、タンパク質をつくる設計図に当たる部分を「遺伝子」と呼んでいます。ヒトゲノムには約2万個の遺伝子が含まれていると考えられています。
身体の中ではタンパク質がいろいろな働きをしています。遺伝子に変化が起こって正しいタンパク質が作られない場合、身体の働きを大きく損ねたり、病気の原因になったりすることがあります。つまり、多くの病気は遺伝子の異常や何らかの作用により引き起こされているのです。

(※)1920年、ウィンクラー博士がgene(遺伝子)と染色体(chromosome)を合わせた「ゲノム」という単語をつくり、「配偶子(生殖細胞)がもつ染色体のセット」と定義しました。1930年に木原均博士が「生物をその生物たらしめるのに必要な最小限のセット」と定義し直し、ゲノムは染色体・遺伝子全体ととらえらていました。

1956年にDNAという物質がすべての遺伝情報を格納していることが発見され、現在の解釈となっています。

 

【参考】
文部科学省 生命倫理委員会『ヒトゲノムと遺伝情報』
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kagaku/rinri/hginf628.htm

 

日本版更新日:2021年6月
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