皮膚の健康
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健康に留意する際には皮膚のケアも忘れないでください。小児がんの治療は皮膚を傷めることがありますが、見落されがちです。皮膚は細菌のような外部からの侵入に対する身体の最初の防衛線です。
がんの治療による影響
身体のどこかに放射線治療を受けた小児がん経験者(「全身照射」も含む)は、皮膚にがんなどを発症するリスクがあります。骨髄移植や幹細胞移植に伴って「慢性GVHD(移植片対宿主病)」を発症している人にも「皮膚硬化症」や「白斑症」などの問題が生じます。
放射線治療による皮膚への影響
通常、放射線治療が皮膚に及ぼす長期的な影響は軽いものであり、放射線を照射した部位にだけ起こります。以下のような問題が起こります。
- クモ状静脈: 毛細血管拡張症とも呼ばれ、小さな毛細血管が皮膚の表面上に浮いて見えます。通常は健康上の問題がなく、特別な治療を必要としません。
- 線維症: 血管の内側が瘢痕化すると、線維症と呼ばれる“木”のような肌になります。線維症の皮膚は負傷しやすく、回復するのに長い時間がかかります。線維症の皮膚のケアには普段から保湿クリームを使い、切り傷や擦り傷を防ぐようにしてください。
- 過色素沈着症: 放射線治療と一部の化学療法の後に、皮膚や爪が黒ずむ症状が起こる場合があります。特別な治療をしなくても、普通は時間の経過とともに薄れていきます。
- 皮膚がん: 早期に診断されれば、皮膚がんは非常に治療しやすい病気です。一番多い皮膚がんは基底細胞癌です。このがんが致命的であることは稀です。多くの場合、最初は皮膚がざらざらして盛り上がって見えます。それからなかなか治らない腫れ物になります。扁平上皮癌も同様ですが、基底細胞癌より他の組織や部位に転移しやすいようです。最も深刻な皮膚がんは、悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれます。これは通常“ほくろ”から生じます。治療しないと他の臓器まで広がり、致命的になります。
GVHD(移植片対宿主病)による皮膚への影響
GVHDによる長期的な影響は「皮膚硬化症」と「白斑症」です。どちらも元にあるGVHDの治療を中心に行います。
- 皮膚硬化症: 移植された白血球が患者本人の皮膚細胞を攻撃し、皮膚を固くします。これが関節の周囲の皮膚で起こると、関節が動きにくくなる場合があります。
- 白斑症: 移植された白血球が皮膚の色を作る細胞を攻撃し、皮膚から部分的に色素が抜ける原因となります。屋外に行く前には日焼け止めを塗って、色素が抜けてしまっている箇所を日光から保護することが重要です。
皮膚を健康に保つためにできること
皮膚トラブル発生のリスクが高くなる以下のような要因がある場合には、毎月皮膚をチェックし、少なくとも年に1回は医師の診察を受けてください。
- 放射線治療を受けたことがある
- 本人または家族の誰かが皮膚癌や悪性黒色腫にかかったことがある
- 通常とは異なるほくろがある
- 小児期に深刻な日焼けをしたことがある
ほくろがある場合は、以下の「ABCDの危険信号」に該当しないかを確認してください。
A: 左右非対称(Asymmetry)
ほくろの片側がもう片方の側とは異なって見える。
B: 境界不明瞭(Border)
ほくろの境界部分が不規則ではっきりせず、不明瞭な形になっている。
C: 色が入り混じっている(Color)
ほくろの一部の色が他の部分と違っている。
D: 直径(Diameter)
ほくろが直径6mm(鉛筆の後ろについている消しゴムくらい)よりも大きい。
A~Dのどれか1つでも当てはまる場合には、医師に診てもらってください。切除する必要があるかもしれません。皮膚を保護するためのその他の方法は以下の通りです。
- 日光を浴びる時は、防護用の服を着るか、紫外線防御指数(SPF)が15以上の日焼け止めを使ってください。たくさん汗をかいたり泳いだりする時は日焼け止めを塗り直すか、耐水性の日焼け止めを使ってください。
- 砂や雪やコンクリートに囲まれた場所、水辺、高地などにいる時には、皮膚を保護するために特に気をつけてください。日焼けによるダメージでリスクが高くなります。
- 機器による人工的な日焼けも含めて、肌を褐色に焼くことは避けましょう。
- 屋外での活動は早朝または夕方の日射しが強くない時間帯に行いましょう。
担当医に伝えるべきこと
放射線治療を受けたことがあるか、皮膚に異常を生じるその他のリスクがある場合には、少なくとも年1回以上の皮膚の診察を担当医に依頼しましょう。