ホジキン病の診断
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ホジキン病(ホジキンリンパ腫とも呼ばれます)はリンパ組織系のがんです。リンパ組織系は、リンパ節、扁桃腺、骨髄、脾臓および胸腺など、様々な組織と器官で構成されています。これらは感染や疾病とたたかうためのリンパ球を生産したり保管したり運んだりしています。
米国では毎年約900人の子どもと若者がホジキン病と診断されています。乳幼児や非常に幼い子どもにおいても報告されてきましたが、5歳以前に発症するのは稀であると考えられています。症例数は10歳を過ぎると著しく増加し、10代が最も多いです。
ホジキン病の患者の多くは、リンパ節炎と呼ばれる、リンパ節(細菌を取り除くのを助けるための白血球を保管しておく身体全体に存在する小さな組織)の腫れを経験します。リンパ節は感染とたたかって大きくなってしまう場合を除き、通常その存在を感じることはありません。ホジキン病では一般的な感染よりもリンパ節が大きくなることが多く、また、抗生物質のような標準的な薬物療法を行っても縮小しません。異常なリンパ節は大抵、首か鎖骨上に見つかります。腋下や鼠径部に見つかることはそれほどありません。リンパ節は無痛で、堅く、弾力性があり、周囲組織内で動きます。
ホジキン病の患児は食欲不振、体重減少、寝汗、発熱、イライラ感、倦怠感なども経験します。これらは一般的に起こる「全身症状」です。ホジキン病の患者におけるもう一つの特有な症状はかゆみ(掻痒)です。かゆみは穏やかな場合も激しい場合もあり、病気が進行している患者においてより多く起こる傾向にあります。
ホジキン病の診断確定
診察は病歴の確認と視触診で始まります。医師は患児のリンパ節と腹部を徹底的に診察します。小さくて柔らかいリンパ節よりも大きくなりつつあるリンパ節や著しく大きくなったリンパ節が問題となります。脾臓や肝臓の腫大もよくある症状です。通常、生検に先立って胸部X線検査が行なわれますが、この病気を診断確定するにはリンパ節(あるいは稀に他の部位)の生検が必要です。
ホジキン病の疑いがある患児を診断するために多くの検査が行われます。診断は、視触診、検査室での分析、画像検査の結果などを踏まえて行われます。専門医に紹介する前に、かかりつけの小児科医や家庭医が最初の検査をいくつか受けるように指示します。より正確な診断を確定するために、検査の一部は繰り返し行う必要があります。
- 検査室での分析:この検査で病期を確定することはできませんが重要です。
- 全血球数(CBC)
- 赤血球沈降速度(ESR、血沈):体内の炎症を見つけるための血液検査
- 腎機能検査および肝機能検査
- 画像診断:全ての検査がどの患児にも必要とは限りません。
- 胸部X線検査
- CT検査
- MRI検査
- 骨スキャン
- PET検査
- 骨髄生検
進行度の判定
ホジキン病のために開発された標準的な病期分類(ステージⅠ~Ⅳ)は、アンアーバー病期分類と呼ばれ、がんに浸潤されたリンパ節の位置で病期が定義されます。病期の数字が大きいほど病巣はリンパ組織系全体に及び、身体の他部位へも広がっています。
ホジキン病のアンアーバー病期分類
ステージⅠ: 病巣が1つの部位だけに見つかる状態。
- ステージⅠ: 病巣が1つのリンパ節領域(最も一般的には首)において見つかる状態。
- ステージⅠE: 病巣が1つのリンパ節外臓器や組織で見つかる状態。
ステージⅡ: 複数の箇所から病巣が見つかりますが、横隔膜(胸腔と腹腔とを分ける薄い筋肉)の同じ側(上あるいは下)に存在している状態。
- ステージⅡ: 病巣が横隔膜の同じ側の2つ以上のリンパ節領域に限られている状態。
- ステージⅡE: 横隔膜の同じ側の1つ以上のリンパ節、およびその周辺の臓器や組織で病巣が見つかる状態。
ステージⅢ: 病巣が横隔膜の上・下両側で見つかる状態。
- ステージⅢ: 病巣はリンパ節領域に限局しているが、影響を受けたリンパ節が横隔膜の両側にある状態。
- ステージⅢE: 病巣が横隔膜の両側のリンパ節領域にあり、周辺の臓器や組織でも見つかる状態。
- ステージⅢS: 病巣が横隔膜の両側のリンパ節領域にあり、脾臓でも見つかる状態。
- ステージⅢE+S: 病巣が横隔膜の両側のリンパ節領域にあり、脾臓および周辺の臓器や組織でも見つかる状態。
ステージⅣ: 病巣がリンパ節外の組織に広範に存在する状態。肺、肝臓、骨あるいは骨髄で病巣が見つかった場合には病期Ⅳと分類されます。
上記のⅠ~Ⅳの各病期はさらにAかBのいずれかに分類されます。
A | 以下の3つの「B」の症状のいずれにも該当しない状態。 |
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B | 1. 原因不明の38.0℃を超える発熱が繰り返し起こる。 |
2. 寝汗をかく。 | |
3. 意図せぬ10%以上の体重減少が6か月以上にわたって続いている。 |
診断時における進行度は、米国では以下の通りです。
- ステージⅠおよびステージⅡ: 患児の約60%
- ステージⅢ: 患児の約30%
- ステージⅣ: 患児の約10%
ホジキン病の原因
ホジキン病の原因はわかっていません。疫学研究と呼ばれる、人口に占める疾病の割合を調査する研究は、発症のリスクと考えられるいくつかの要因を示唆しています。しかしながら、どんな特別な要因であってもこの疾病の真の原因であるという科学的な証拠はありません。
現状の医学的知識では、以下のような物事によってお子さんのホジキンリンパ腫発症のリスクが高まることはまずありません。
- ホジキンリンパ腫にかかっている人との接触
- X線検査で用いる程度の放射線
- 化学製剤への接触
ホジキン病の発症リスクとして確実にわかっていることはほんのわずかです。
EBウイルス(EBV) : 米国では20~50%のホジキン病患者の腫瘍においてEBウイルス(伝染性単核症の原因ウイルス)が見られます。研究者はEBウイルスがこれらの患者のホジキン病の原因の一部であると考えています。しかしながら、幼年期または思春期にEBウイルスに感染しても、実際にホジキン病を発症する人はごく少数です。EBウイルスが腫瘍内に見つからない場合はウイルスが原因ではありません。ホジキン病のいくつかの症例ではEBウイルス感染と関係があるということはわかっていますが、EBウイルス感染症の患者の大多数は発症しないのに、なぜわずかな人達だけがホジキン病を発症するのかがわかっていません。
ホジキン病の家族歴: ホジキン病の若者の両親、兄弟姉妹、子どもはがんの発症リスクが高くなっています。特にホジキン病患者の同性の兄弟姉妹の間で発症リスクが増加していることが研究によって報告されてきました。ホジキン病の発症リスクは兄弟姉妹だと2~5倍高くなりますが、兄弟姉妹が実際に発病する可能性は非常に低いです。家族内や特定の人種においてホジキン病がまばらに発症することは、病気の遺伝子的素因を示唆しているかもしれません。
経済状態: 貧しい国々の居住者と比較すると、米国のような先進国の居住者は10歳未満だとホジキン病を発症しにくい傾向がありますが、思春期をすぎた若者ではより多く発症するようです。
社会的接触: 子どもの時に兄弟姉妹や遊び仲間の人数がより少ないと、思春期をすぎてからホジキン病を発症するリスクが高まる傾向があります。
免疫系の欠損: ホジキン病は免疫系が弱っている人々により多く発症します。免疫不全は遺伝的な状態によって引き起こされるか、あるいは後天的に引き起こされることがあります。したがって、臓器移植を受けた人々やHIV感染者などは発症リスクが高くなります。
治療の決定と克服の可能性
治療の種類と長期生存の可能性は多くの要因によって異なります。ステージⅠまたはⅡのほとんどの患児は治癒が可能ですが、これらのステージの患児10人のうち1人位は別の疾患にかかって追加治療を必要とします。病気の再発は長期生存の可能性を減少させます。 以下のような要因の存在が長期生存の可能性を低下させます。
- 進行した病期(ステージⅢまたはⅣ)。米国ではステージⅢおよびⅣの患児も10人のうち約8人は治癒します。
- 診断時にBの症状がある場合。ホジキン病の病期分類を受けた患児の約3分の1はBに分類されます。この割合は進行した病期ほど高くなります。
- 「腫瘍塊」とも呼ばれる、大きながんのようなリンパ節やリンパ節群。
- 特定の病理組織学的所見(顕微鏡下で腫瘍細胞の種類を診断する方法)。
これらに該当する患児が治癒の可能性を最大にするためには、より強力な治療と放射線治療を必要とします。
米国版の更新時期: 2011年9月
日本版の更新時期: 2012年3月