悪性黒色腫(メラノーマ)の診断

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悪性黒色腫(以下、黒色腫と記載)は、皮膚、体毛、眼などにある色素をつくる細胞から発生する皮膚がんです。ほとんどの黒色腫は皮膚にできますが、眼にできる場合もあります。

黒色腫は皮膚がんの中で最も多いがんではありませんが、最も重篤ながんです。米国では毎年約6万人が黒色腫と診断され、このうちの約450人は20歳未満です。

皮膚黒色腫の危険信号は「黒色腫のABCDE」と呼ばれており、以下のような内容です。

A: 左右非対称(Asymmetry)

 ほくろが左右対称ではない。

B: 境界不明瞭(Border irregularity)

 ほくろの境界部分がはっきりせず、不明瞭で不規則な形になっている。

C: 色が入り混じっている(Color variegation)

 茶色や黒だけでなく、他の色が混じっている。

D: 直径(Diameter)

 ほくろの大きさが、鉛筆についている消しゴム(直径約0.6cm)よりも大きい。

E: 進展している(Evolving)

 ほくろの大きさ、形、色などが変化してきている。

他の徴候としては、ほくろの出血やかゆみ、周りの皮膚を傷つけているほくろなどがあります。ほくろの近くの腫れやほくろに近接するリンパ節の腫れも医師に診てもらうべきです。

黒色腫を診断したり鑑別したりできる血液検査(腫瘍マーカー)はありません。このため、上記の危険信号のうちのいずれかがある場合は、かかりつけ医に速やかに伝えることが重要です。早期に診断されて治療が行われた場合、黒色腫の生存率は高いです。

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黒色腫の診断

異常に見えるほくろを切除したら、病理医へ組織標本を送るべきです。病理医は顕微鏡で組織を観察して黒色腫かどうかを診断します。黒色腫の診断がなされたら、担当医と病理医はその病期を判定します。

黒色腫が進展しているかどうかを調べるために、医師は黒色腫の周囲リンパ節の触診を行います。腫瘍が黒色腫に近いリンパ節まで広がっているかどうか確かめるために、センチネルリンパ節生検(※)と呼ばれる検査を医師が指示するかもしれません。
(※訳注:がんの一部はリンパの流れに従って全身に拡がる性質があります。「センチネル」とは「見張り」の意味で、がんが最初に流れ着くリンパ節を「センチネルリンパ節」と呼び、ここで転移が見つからなければ、それ以上のリンパ節の摘出を省略しようとする試みが「センチネルリンパ節生検」です。必要以上のリンパ節郭清は運動障害や知覚異常、浮腫やむくみなどの後遺症を残す可能性があるため、これを避けることには大きなメリットがあります。)
黒色腫がリンパ節に浸潤している場合、医師はその周辺のリンパ節をすべて切除する手術を推奨します。この場合、腫瘍が身体の他の部位へ広がっていないことを確認するために、CT検査PET検査のような追加検査が行われます。

黒色腫は病気の重症度に応じてⅠからⅣまでの4段階に分類されています。

  • 病期ⅠおよびⅡ: 皮膚のみに黒色腫があります。黒色腫が皮膚のどのくらいの深さまで浸潤しているかを表す「ブレスロー(Breslow)の腫瘍深達度(※訳注:表皮顆粒層から最深部の腫瘍細胞までの垂直距離をmm単位で表したもの)」と、黒色腫の表面に潰瘍があるかどうかによって、さらにⅠa、Ⅰb、Ⅱa、Ⅱb、Ⅱcに分類されます。
  • 病期Ⅲ: 黒色腫がリンパ節に広がっています。
  • 病期Ⅳ: 黒色腫が肝臓、肺、脳などの臓器へと広がっています。

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黒色腫の原因

ほとんどの小児における黒色腫の発症リスクは成人とほぼ同じであることを示した研究が、数は少ないもののドイツとオーストラリアから報告されています。小児の黒色腫の発症リスクを高めるような条件は、以下の通りです。

  1. 胎盤を通して母体から胎児へと腫瘍細胞が移った結果、出生時に黒色腫が存在している場合(先天性の黒色腫)
  2. 非常に大きなほくろが存在する場合(巨大な先天性母斑)
  3. 色素性乾皮症と呼ばれる希少な病気(※訳注:遺伝性疾患)と診断されている場合
  4. 神経皮膚黒色症(※訳注:遺伝性疾患)と呼ばれる希少な病気である場合
  5. Werner(ウェルナー)症候群である場合
  6. 家族性網膜芽細胞腫の病歴がある場合
  7. 骨髄や腎臓の移植後、あるいはHIVなどの感染症により免疫機能が低下している場合

米国版の更新時期: 2011年9月
日本版の更新時期: 2012年3月

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