治療終了後2~6ヶ月
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治療から数週間後、ほとんどの患児は血小板、赤血球、白血球の減少のせいで合併症を起こすことが少なくなり、血球数が正常になります。免疫系は回復しつつありますが、まだ正常の状態には戻っていません。
積極的ながん治療の間は、患児とご家族は病院で定期的に治療チームのメンバーや他の患児の親たちに会います。治療チームはお子さんの治療がうまくいっているという安心感を与えてくれますし、質問にすぐに答えて心配事の相談にのってくれます。また、他の患児の親たちの存在には元気づけられます。しかし、治療が終わってしまうと、このような相談相手との接触がほとんどなくなります。
そのようなわけで、親御さんは、治療中には自分達が乗り越えてきたことを理解してくれていると思えた人たちにもはや頼ることができないと気付く場合があります。10代の若者では、友人の多くが自分を見捨てたと感じるかもしれません。治療終了直後には、治療後に生じるプレッシャーや不安を理解してくれる人を見つけることは特に困難です。
しかし、少し話をすれば、友人や親戚はあなたの感情を良く理解できるようになります。また、このような状態を解決するためにオンライン上の患児の親の会で新しい支援システムを作ったり、電子メールで他の入院中のご家族と連絡を取り続けたりする親御さんもいます。
熱が出たり具合が悪くなったりした場合の対処方法
発熱や小さな病気への対処方法を決める場合は、お子さんの担当医に確認してください。お子さんの血球数が正常で、中心静脈ラインやポートが既に撤去されているのであれば、感染症のリスクは小さいです。医学的な処置を受けるために誰に連絡すべきか、お子さんが病院へ行く必要があるかどうかについては、がんの治療チームが相談に乗ってくれます。
水ぼうそうや帯状疱疹の人と接触した場合
お子さんの免疫は、治療後6か月間は低下したままです。以前に水ぼうそうや帯状疱疹の人と接触した時に特別な薬を服用する必要があった場合は、今回もその薬が必要となります。
抗生物質(抗生剤)の内服を継続する必要性
お子さんが抗生物質を内服している場合、この薬は通常、治療が終わっても数か月間にわたって内服を継続する必要があります。治療後3~6か月経てば、治療チームはこの薬の投与を中止するかもしれません。
体育の授業、フットボール、サッカー、水泳などへの参加
お子さんの中心静脈ラインやポートが取り外され、傷口が治ったのであれば、水泳に関する制限はありません。運動は健康のために必要なので、活動できない特別な身体的理由がない限りは毎日運動する方が良いでしょう。運動するにあたっての制限がないかどうか治療チームに相談してください。また、スタミナや体力が十分なレベルに戻るのには時間がかかることが多いということも覚えておいてください。
脱毛
脱毛は一部の抗がん剤や放射線治療による副作用です。がん治療が終わると、通常、髪はまた生えてきます。しかし、がん治療の前よりもわずかに髪の色や手触り(くせの有無、毛髪の太さなど)が異なるかもしれません。脳腫瘍の治療で用いられるような高線量で放射線治療を受けた場合には、放射線を照射した部位には髪が生えてこないことがあります。何か問題があれば、あらゆる質問や不安について治療チームと話し合ってください。
病院に行くことへの不安
検査のために病院へ行くことにストレスを感じるかもしれません。一部の親御さんは、予約の日が近づいてくるとだんだん不安になり、そして、それが終わると非常にリラックスした気持ちになり、病気のことをしばらくの間忘れることができると言います。
お子さんを動揺させたくないという理由で病院に行きたがらない親御さんもいます。しかしながら、お子さんが経過観察を受け続けることは大切なことです。穏やかにリラックスした気持ちで自分の時間を楽しむ方法を見つければ、お子さんの不安もやわらげることができます。治療終了後の受診は、お子さんが「小児がん経験者」という立場になって、自分の健康に注意する力を身につけるためにも重要です。
病院へ行くことが他のストレスをもたらす場合もあります。まだ治療を受けている他の患児に会うのはつらいことかもしれません。お子さんの治療に関するつらい記憶を呼び起こす可能性もあります。病院に行くと、治療中に知り合いだった他の患児についての話を親御さんが聞く場合もあります。これが悪い知らせの場合、その子やご家族のことを思って親御さんが悲しい気持ちになるのは当然のことです。そのせいで、自分の子どものことが非常に心配になる親御さんもいます。同じ病気の診断を受けていたとしても、それぞれの子どもによって病気は別のものなのだということを覚えておくことは常に大切なことです。
再発への不安
治療の終了によって子どものためのセーフティーネット(※訳注:安全のための防護策)を失うような気がする、と親御さんたちはよく言います。治療中は病気に打ち勝つためにできることは全て行われていると家族は感じています。もし病気が再発しないことを保証できるのであれば、親御さんは、わが子が低用量の化学療法を生涯にわたって続けることを希望する気持ちになることでしょう。なぜ治療が終わるのかを理解するために、お子さんを担当する治療チームと話をすることが重要です。
再発の不安と戦っている場合は、以下のようなことを思い出すことが役立つかもしれません。
- ほとんどの小児がんは再発しません。
- 再発の可能性は、治療が終わってから経過した時間が長いほど少なくなります。
- 多くの子どもは、たとえ病気が再発したとしても、治療に対する望みがまだあります。
食事
お子さんの栄養状態や食事の嗜好は、がん治療によって影響を受けます。ステロイド剤で治療が行われた場合には、塩分が多くて不健康な食べ物をしきりに欲しがり、体重の超過を招くことがあります。口内炎や吐き気を引き起こすような治療を受けたお子さんは、体重が減り、食べ物への嫌悪感(特定の食品の回避)を経験したかもしれません。このようなことは、異なる味や食感の物を食べることをちょうど学んでいる乳幼児に特にありがちです。
通常の食事へは徐々に戻すことをめざすべきでしょう。ステロイド治療中に食べていた高カロリーのおやつや塩分の多い食品は、治療が終わったらやめるべきです。全ての食品群から様々な食べ物を毎日食べるようにお子さんを励ましましょう。高カロリーでも栄養のない食品は、体重が足りない場合でも食べさせないでください。病院の栄養士は食事の提案や献立作りを手伝います。適切なバランスのタンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミンおよびミネラルを含む健康的な食事は、お子さんの体が成長し、病気が治り、元気になるのを助けるという重要な役割を担っています。もちろん、家族全員で食べるのが最善の方法です。
ビタミンなどのサプリメントや市販薬
ビタミンなどのサプリメントを健全な食習慣の代わりにすることはできません。牛乳などの特定の食品群を摂取することができないか、ビタミンDなどの栄養素が足りない子ども達のためにならサプリメントを使用しても構いません。総合ビタミン剤を毎日摂取するようにと推奨する医療関係者もいます。いかなるビタミン剤も、使用を始める前には医師や薬剤師に相談してください。健全な食事と医学的な必要に応じて摂るサプリメントであれば、健康を保つのに必要な広範囲の栄養素やビタミンを摂取するのを助けます。
治療終了後6か月以内においては、以下のようなものをお子さんに与えようとする際には、事前に担当医と話し合うことが非常に重要です。
- 市販薬(処方箋なしで買える薬)
- 漢方薬やハーブ製剤
- 補完代替治療(※訳注:補完代替治療とは、より広い分野の治療手段を説明するのに使用される言葉です。一般的に認められている治療(化学療法、骨髄移植、放射線治療、手術など)以外の様々な方法、いわゆる健康習慣と呼ばれているようなものまで幅広く含まれます。)