「精神的成長」

 一般論ですが、「患者の精神的成長は治療と関連しているらしい」ということが分かっています。

 まず、誰もが「がんの経験で何かを得られる」というわけではありません。治療中に、家族との時間が増えたり、友人が訪ねて来たり、お見舞い品を見て、「支えられている」と気付きを得る場合もあります。しかし、何年も後に気付く人もいますし、何も感じなかったという人もいます。そのため、「経験から得るものはあったか」「前向きになるような気付きがあったか」と聞かれ、特に無いのであれば無理に話を作る必要はありません。
 また、がん経験者に「経験から得るものがあったか」を聞くのは構いません。ただ、誰もが気付きを得るとは限らない、ということを覚えておきましょう。

 診断された年齢が高い患者ほど、「がんを経験することで精神的に成長し、プラスになることを得た」と感じるようです。年齢を重ねるごとに複雑な考えを持つ能力が高まるので、命にかかわる病気からも有益なことを見つけようとするのかも知れません。また、治療方針の決定に関わりやすくもなるので、病気や治療による影響の良し悪しの両面を考えるのかも知れません。
 精神的成長は、闘病中にどれだけの困難を経験しているかにも関係します。自分の病気が深刻であったことを覚えている人ほど、精神的成長の度合いが高い傾向にあります。

 さらに、ものごとを楽観的に考えられる患者に、「がんになって得られたことが沢山ある」と考える傾向があります。人生への向き合い方と、がんになった時の対処の方法が似ているということです。プラスだと思える面に目を向けようとする人は、がんになってもプラスな面を見つけます。
 (訳注:一般論として、病気を自分なりに受け入れ、向き合うことができるようになることで、前向きな気持ちや考えを持つことができるなど、精神的に成長できるようになると言われています)

 がんになったからといって、誰もが精神的な成長を経験するわけではありません。治療中は多くの人が支え、さまざまな経験をし、うまく対処することを学んだかもしれません。しかし、「がんになって良かった」と思うことはできません。「がんにならなければ良かった」と思うでしょう。また、前向きな気持ちになるという経験をしても、健康ですべてに満足かという懸念があります。
 がんがもたらすプラス面とマイナス面、両方を注視することが重要です。

日本語版更新:202010
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