心配な行動
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ひきこもり
がんと診断された子どもが、しばらくの間怖がったり、落ち込んだりすることは普通のことです。親や医師とあまり話をしたがらないかもしれません。年齢が高い子どもたちは、友だち、少なくとも親友やボーイフレンド、ガールフレンドとは多少会話をします。しかし、彼らの心配事が友だちとの日常的な話題とはあまりにもかけ離れているため、交流するのが難しい場合もあります。これは親にとっての試練でもあります。お子さんを安心させてあげることや、お子さんが話したいと思う時に話を聞いてあげることが最善の方法です。また、がんが怖いと思うのは当たり前なのだと話してあげましょう。それと同時に、お子さんに最も効果のある治療を行うために努力し続けている医師たちがおり、その医師たちやあなたは治療が成功すると信じていることを話して、安心させてあげることが大切です。
問題行動
病気の子どもが他の子にけがをさせるようなことをするのは稀です。しかし、がんになったことに対する怒りの気持ちから、物を投げたり何かを壊したりすることはあります。お子さんの普段の行動と違うかもしれませが、今起きていることはお子さんの人生で最悪の出来事なので、腹を立てるのももっともなことです。してしまったことを問題にするよりも、お子さんが今どんな気持ちでいるのか、またどうすれば助けてあげられるのかを聞いてあげる方が有意義です。問題行動が続く場合には、担当の治療チームのスタッフ(カウンセラーなど)に相談した方が良いでしょう。
けんか
患児がけんかをするのは珍しいことですが、がん治療の最終段階で学校に戻る頃には起こりがちのことです。けんかが問題になる場合は、病院の精神科医や心理療法士などの専門家に支援を求めるか、学校にいる専門家(※訳注:スクール・カウンセラーなど)に相談してください。
兄弟姉妹とのけんかについては、患児にばかり関心が集まっていることに対する兄弟姉妹の嫉妬か、あるいは健康な兄弟姉妹に対して患児が持つ嫉妬が原因であることが多いです。どちらが悪いかを性急に決めることはしないでください。その代わりに、双方のお子さんと一緒に座って、大変な病気のせいで家族の状況が変わってしまい、それがどんなにつらいことかについて話してあげてください。兄弟姉妹は、いつも患児にばかり関心が向いているわけではないということや、時には嫉妬したり怒ったりすることも仕方ないということを親に確認して安心したいのかもしれません。しかし、兄弟姉妹に対しては、患児に怒りを向けないように念を押しておく必要があります。また、患児の側も、兄弟姉妹にとっても今が大変な時であることや、彼らが患児のことを心配していても、家族の関心が病気の克服に集中して不公平に感じているということを理解しておく必要があります。さもなければ、患児が兄弟姉妹の立場で物事を考えることはありません。
自傷行為
自傷行為は、助けを求める切実な心の叫びです。お子さんのうちの誰かが自傷行為をする場合は、直ちに精神科医や心理カウンセラーなどに相談してください。
危険を冒したり、禁止事項を破ったりすること
がんを経験した思春期の若者は、自分たちの成長期に失った時間を取り戻さなければならないと感じていることがあります。それが、退院して家に戻った時に自分一人で何でもできることを性急に示したがったり、あるいは、治療中に危険なことをしてみたり、夜遅くに帰宅したり、行き先を告げずに外出したりといったことで表現される場合があります。思春期のお子さんに対しては、普段通り、許されることとそうでないこととの境界線をはっきりと引いて接し、自分のふるまいが周囲にいかに影響を及ぼすかを理解させるようにしてください。とんでもないふるまいや不健康な行動を止めさせることができない場合には、精神科医か心理カウンセラーに相談してください。お子さんがこのような専門家に相談するのを嫌がる場合には、このような行動を止めさせる方法について、保護者が事前に専門家の助言を受けておくと役立ちます。
飲酒や薬物依存
がんを経験した思春期の若者は、他の子どもたちに比べると酒を飲んだり薬物に依存したりすることは少ない傾向にあります。しかしながら、特に学校で他の子と同じように「普通」だと誇示したい時や、「かっこよく」見せたい時に問題が起こります。兄弟姉妹も、家庭の心配な状況から逃れるために薬物や飲酒に手を出してしまう場合があります。このような子どもたちに対しては、今までと同じように直接話をして止めさせるように対処すれば良いのです。うまくいかない場合には、精神科医や心理カウンセラーに相談してください。
学業不振
がんになった子どもたちは、学業が以前のレベルになかなか戻らなかったり、時が経つにつれてさらに悪くなってしまったりすることがあります(このウェブサイトの「学校の支援」の項目を参照してください)。特に頭部に放射線治療を受けた患児にこのような傾向が見受けられます。心の問題や倦怠感によって学業が妨げられる場合もあります。学業向上のために何が役立つかについてお子さんの主治医と話し合うか、お子さんの学習の向上を図る方法について学校の先生に相談してみてください。このことは調整に時間がかかる問題ですが、多くの子どもたちは以前の学業のレベルを取り戻し、短大や大学などに進学しています。米国では、小児がん経験者に対する奨学金を設けている大学もあります。
友だちがいない
一部のお子さん、特に脳腫瘍のお子さんでは、病気そのものと治療が友だちなど周囲との関係に影響を及ぼすことがあります。脳腫瘍以外のお子さんについても、身体が弱くなったり、前ほど行動的でなくなったりするため、同じ年頃の子どもたちと一緒に行動することに影響が出るかもしれません。
お子さんが友だちと良い関係を築くためにあなたにできることはたくさんあります。そして、お子さんが自分の経験を他の子どもたち伝えることによって、友だちはどのように話しかければ良いかがわかるようになります。また、お子さん自身が恥ずかしがって他の子を避けることもなくなります。病気になる前に活発だった子は大抵親しい友だちとの関係を持ち続け、一度離れたとしても再び元の関係に戻ることができます。もともとあまり社交的でなかったお子さんや頭部に放射線治療を受けたお子さんががん治療後に社会的な関係を築くためには、より多くの手助けが必要です。