睡眠について
こどもの成長には、よい睡眠をしっかりとることが大切です。しかし、病気になると、身心の苦痛や不安、生活リズムや環境の変化などにより、睡眠が妨げられることがあります。こどもの不眠は行動の問題(過活動、衝動性、攻撃性)や、動悸や頭痛などの不調が起こり、治療に影響を及ぼすこともあります。
また、患児の家族も同様です。不眠が続くと、身体的にも精神的にも疲労が蓄積し、記憶力、注意力、判断力が低下することもあります。
=== 患児の不眠 ===
不眠の原因
- 不安感や抑うつ感:がんという診断や、どのような治療が行われるのかという不安。
- 周囲の環境変化:夜間に誰かが病室に出入りする回数と、患児の疲れやすさが関係するという研究結果もあります。
- 運動不足:活発に動くことで疲れ、夜にぐっすりと眠ります。しかし、病院では活発に動くことができないため、寝付けないことがあります。
- 治療薬の影響:処方される薬剤によっては、患児の行動や睡眠を妨げる場合があります。
不眠の場合
- 苛立ち、反応の鈍さ、欲求不満、不機嫌になる。
- 夜になっても寝ようとしない。または寝るのを嫌がる。
- 「眠れない」「夜中によく目が覚める」と訴える。
- 治療薬の作用として想定された以上に、患児が疲れや眠気を感じている。または長い時間眠っている。
薬の服用量を変えたばかりだと、薬の作用によるのか、睡眠に問題があるのか、気分が落ち込んでいるのかが分からないことがあります。このような場合は主治医に相談しましょう。
よい睡眠のために
- 治療薬の成分が影響する場合もあります。主治医に確認しましょう。また、市販の睡眠薬やサプリメントは、服用前に必ず主治医に相談してください。
- 家で使っている寝具を病室に持ち込むなど、普段と変わらない睡眠環境をつくりましょう。
- 適度に疲れるとぐっすり眠れます。軽い運動のプログラムが病院にあるか、スタッフに聞いてみましょう。
- 生活リズムをつくりましょう。家で「寝る前にはこれをしている」という習慣があるように、入院中にも決まった動作を習慣づけます。そうすると、患児は「寝る時間だ」と理解します。
- 睡眠の大切さを患児に話します。そして、患児と一緒に眠り易い方法を考えてみましょう。
- 患児の不安や懸念を軽減する方法を工夫してみましょう。
(例)・寝る前に静かな時間をつくり、不安なことや気懸かりなことを日記や絵を
描く。
・ウォーリードール(worry doll)を使う。患児には「この小さい人形に悩
み事を話して枕の下に置くと、夜の間に人形が代わりに心配してくれる。
だからもう大丈夫」と説明しておきましょう。
- === 保護者の不眠 ===
- 不眠の場合
- 患児をケアする余裕が無くなる。
- 患児の治療やケアに関することを理解できず、的確な質問や決断がしづらくなる。
- 苛立ち、短気になることが多くなる。患児やきょうだい、パートナーに対して不寛容になる。
- 「自分は患児の付き添いなのに、パートナーは家で寝ている」と恨めしく思う。
- 病院のスタッフに怒りやすくなる。
よい睡眠のために
- 自宅に戻る時間をつくり、慣れた環境で睡眠をとりましょう。
- 病院の階段の上り下りや散歩など、適度な運動をしましょう。身体を動かすことでリフレッシュし、よい睡眠につながります。
- 病院のソーシャルワーカー、臨床心理士、診療内科医、精神科医に相談するとよいでしょう。また、睡眠薬を使う場合は、かかりつけ医、診療内科医、精神科医などに相談してください。
日本版更新:2023年1月