米国の特別教育サービス

米国の教育体制 ~特別教育サービス~

 米国の場合、公立学校(3歳から高校卒業まで)には無償の特別教育サービスがあります。この教育サービスには、才能のあるこども、特別な医療や学習ニーズを持つこども、発達が遅れているこどもが対象になります。これは、米国のすべての学区のこどもたちを対象に、連邦および州の教育法によって義務付けられており、各地区の特殊教育部門を通じて提供されます。
 私立学校のこどもの場合は、地元の公立学校でこのサービスを受けることもできます。内容は、通常のプログラムの変更、学校の教育専門家による1回以上の支援、最も集中的なニーズに対応する特別な自己完結型クラス、特別支援学校など、様々です。
 小児がんの患児は、「その他の健康障害(Other Health Impaired)」のカテゴリーで特別教育を受けることができます。

特別教育サービスを受ける手順は以下の通りです。

1. 親は、公立学校で特別教育サービスの評価申請をします。私立学校の生徒の場合も、地元の公立学校で申請手続きを行うことができます。
 申請を受けると、学区の特別教育サービスの責任者が、患児が「個別教育計画(Individual Education Plan)」、および特別教育サービスの対象となるかどうかを決定します。

2. その後、地区内の特別教育部門が、通常90日以内に評価できるよう調整をします。
 評価は、通常、学区の学校心理学者、他の関連する医療専門家(作業療法士、言語聴覚士、理学療法士など)が行います。評価内容は、親と患児とのインタビュー、心理テスト、直接観察、記録のレビューなどです。
 評価に、患児が通う医療施設からの心理的・神経心理学的な検査の情報や、民間の評価情報を加えるよう依頼することもできます。

3. 評価が完了すると、学校で、親、患児、学区の評価チームによる会議が行われます。この会議では、患児が教育的サービスを受ける資格があるかを判断します。資格があるとされた場合、患児に必要なサービスと、具体的な目標が計画書に明記されます。
 通常、この個別教育計画は、次のような要素が検討項目に含まれています。

  • 学習能力、思考能力、活力や疲労など病気による影響
  • 患児が必要とする教育サービスの内容
  • 患児が参加できる通常の教育プログラムの範囲
  • 手配するサポートの種類とその根拠
  • 医療上の注意事項と必要とされるサポート
    例)多めのトイレ休憩、授業中の水分摂取、間食、日光に当たることの制限、体育の授業のサポートなど
  • 個別教育計画における成果目標
  • 客観的な基準と評価手順
  • 教育サービスの開始日
  • 個別教育計画の実施責任者の一覧表

4. 親が、評価の結論と個別教育計画に同意した場合、文書に署名をします。各学年の終わりや、親や学校が変更の必要性を認めれば見直される、拘束力のある文書になります。

5. 年次の個別教育計画の会議では、進捗状況を評価し、次学年で必要なサービスを決めます。ニーズの変化に合わせ、サービスの増減、停止が検討されます。

6. サービス変更や、親が患児のニーズに合っていないと感じる場合、親は個別教育計画の担当者に再評価を要求できます。

 小児がんの医学的診断の前に、学習障害などの何らかの理由で特別な教育サービスを受けていた場合、それまでの個別教育計画は、病気による新しい教育ニーズを考慮して更新される場合もあります。

日本版更新日:2020年12月
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